カジノ

 2016.12.22    2017.02.13

【IR推進法案】カジノ法案が成立。カジノ合法化がパチンコ業界に及ぼす影響とは?

12月15日、未明、カジノ法案(IR推進法案)が成立しました。

ある意味で、歴史的な出来事だったと思います。

現在まで、日本にカジノが解禁されなかった大きな理由は、パチンコの存在があったからに他なりません。

しかし時代は変わり、カジノはIR(統合型リゾート)という衣を纏い、導入されることになった訳です。

では一体、カジノ合法化は、これからパチンコ業界にどのような影響を及ぼしていくのでしょうか?

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カジノ合法化で何が起こる?

今回のカジノ法案の成立について

今国会でのカジノ法案の成立は、日本における近年のインバウンドの増加、シンガポールのギャンブル依存症対策の成功、自民党の衆参議席単独過半数、他の重要法案の少なさ、など様々な要因が重なり、「機が熟した状態になった」上での必然的な出来事だったような気がしてなりません。

カジノ法案成立までの流れとしては、元々、11月9日に審議入りする予定だったのが、民進党の反対により延期され、ようやく11月末日に審議入りを果たし、それから僅か2週間足らずで成立まで漕ぎ着けるという急展開を伴うものでした。

案の定、衆議院での審議時間6時間というのは、拙速すぎるとの批判を野党から浴び、新聞やメディアにおいても、軒並み辛口の批評が見られるといった状況だったと思います。

今国会で提出された「IR推進法案」というのは、所謂、骨組みだけを定めたプログラム法案であり、当該法案成立後、1年以内に策定される具体的な中身を伴った「IR実施法案」を以て、カジノ合法化が為されるという二段構えの構造になっています。

なので、審議入りした当初は、「具体的な内容の議論については『IR実施法案』の段階で行う」という議員答弁が多かった訳ですが、審議が進むにつれて徐々に「実施法案寄り」の中身の濃い質疑応答が行われるようになっていきました。

そんな中で、ある程度は議論の焦点になると思われていた「ギャンブル依存症問題」が、予想以上に大きな反響を呼ぶことになったのです。

国会審議の相当な部分が、この議論に費やされていたといっても過言ではないでしょう。

細かく見るならば、マネーロンダリング対策、刑法の違法性阻却、治安の悪化、経済効果の妥当性、など様々な議論があった訳ですが、やはり最重要課題は「ギャンブル依存症対策」についてのものでした。

議員の質疑応答の中で必ず出てきたのが、「ギャンブル依存症の疑いがある人の数、536万人、成人の4.8%」という謳い文句。

ギャンブル依存症の8割はパチンコ・パチスロ由来であるといわれているので、当然、国会審議の中でも、度々パチンコ・パチスロが槍玉に上げられることになった訳です。

国会審議、そして様々なメディア等に於いても、これほどまでに「ギャンブル依存症問題」に焦点が当てられたことは、未だかつてありませんでした。

カジノ合法化がパチンコ業界に及ぼす影響とは?

今年はパチンコ業界にとって受難の年で、撤去問題を初め、いくつかの規制や出来事が起きたのは周知のことと思います。

(参考)パチンコ業界にとって激動の2016年を振り返る

そんな時に、最後にもう一つ、「カジノ法案の成立」という衝撃的なニュースが飛び込んで来たのです。

この法案が今後パチンコ業界に及ぼすであろう影響は、いくつか考えられると思いますが、その一つは前章にも出てきた「ギャンブル依存症対策」に関するもの。

そして、今国会における「ギャンブル依存症対策」の議論の際に浮かび上がってきたのが、「ギャンブル依存症対策」は包括的に行われるべきであり、「カジノ法案」如何に係らず、すぐにでも手を付けるべき事項であるということ。

その言葉通り、国会閉会後、各党や政府による「ギャンブル依存症対策」への動きが急ピッチで進んできており、現時点において、もう既に様々な政治的な動きというのが出始めて来ています。

おそらくは、来年の通常国会あたりで、何らかの法制化が為されるものと思われます。

考えられる例としては、税金などの徴収によって依存症対策費を捻出するようなものや、各省を横断するような組織の創設など。

将来的に日本のカジノで採用される依存症対策としては、シンガポールで現在行われている、「自己排除プログラム」「家族排除プログラム」「第三者排除プログラム(自己破産者や多重債務者などの入場規制)」などになると思われます。

問題は、これらに類似したシステムが、パチンコ・パチスロにも応用されるのかどうかということ。

おそらく、税金などの導入は行われる可能性はあるが、「第三者排除プログラム(自己破産者や多重債務者などの入場規制)」のような強い制度の導入までは踏み込んでこないだろうと予想されます。

但し、今回のカジノ法案の修正案の中に、「ギャンブル依存症対策」の項目がはっきりと示されていて、もはや「ギャンブル依存症対策」は、国策マターへと格上げされてしまった感があり、今後どんな対策が施されても不思議ではない。

じゃあ、パチンコ業界が自ら「第三者排除プログラム」のような強い制限システムを取り入れる可能性はあるのかと問われれば、それは低いと思われます。(「自己排除プログラム」は既に一部の店舗において運用されています。)

どちらにせよ、今回これだけ世間的にも「ギャンブル依存症問題」がクローズアップされ、国から対策が施されるのが分かっている以上、今度ばかりは業界は、この問題に本気で取り組む必要性に迫られている。

今年の撤去問題と同様の問題が起きた、20年前の社会的不適合機の撤去の時に比べ、パチンコ・パチスロユーザーの平均費消金額は2倍ほどに増え、ヘビーユーザーによって業界は支えられてきた。

ヘビーユーザーから、一定の割合で「ギャンブル依存症者」が生じてしまうのは自明のこと。

それに対し、業界は「本気」で「ギャンブル依存症対策」を行ってきたのかと問われれば、決してそうであるとは言えないと思う。

海外では、レスポンシブルゲーミング(責任ある賭博)という考え方が浸透しており、平均して収益(粗利)の1%程度が「ギャンブル依存症対策」に使われている。

実は、パチンコ業界も昨年あたりから「依存(のめり込み)問題対応ガイドライン」や、「依存(のめり込み)問題対応運用マニュアル」などのような取り組みを強化してきてはいるが、十分機能しているとはいえない。

パチンコ業界には、「ギャンブル依存症対策」として、治療体制の強化や関連団体への支援、予防教育などの方にも目を向けていってほしいと思う。

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