規則改正案の内容を考察するにあたり、パチンコ台における「出玉率」と「差玉」の理解が必要となるが、分かる人には周知の事実なので、このパートは飛ばしてもらって構わない。
今回の規則改正案の内容については以下のリンクから。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則
様々な変更点や追加事項がある中で、主なポイントを挙げるとするならば、
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大当り時の最大出玉の引き下げ
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パチンコ台に6段階の設定を許可
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試射試験における出玉率の変更
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管理遊技機に関する規定の追加
となる。
当サイトでは特に、パチンコの「試射試験における出玉率の変更」に着目し考察していくことにする。
それでは以下、「試射試験における出玉率の変更点」について具体的に示してみよう。(「儲け金額の上限の変化」については当サイトが独自に追加)
出玉率の変更点
試射試験の時間 |
現行規則 |
改正案 |
1時間 |
300%まで |
33.3%~220%まで |
4時間 |
規定ナシ |
40%~150%まで |
10時間 |
50%~200%まで |
50%~133.3%まで |
儲け金額の上限の変化
試射試験の時間 |
現行規則 |
改正案 |
1時間 |
4万8千円まで |
2万8千8百円まで |
4時間 |
規定ナシ |
4万8千円まで |
10時間 |
24万円まで |
8万円まで |
「儲け金額の上限」については、「出玉率」の上限から計算出来るが、これは前章を参考にしてもらえれば分かり易いと思う。
パチンコ台が「遊技規則の規定」に適合しているかを判定する「型式試験」において、従来は「1時間試射試験」と「10時間試射試験」のみだったのが、今回、「4時間試射試験」が新たに追加された。
これについて、マスコミ等でも「4時間遊技での儲け額が5万円以下になる」と話題になったのは記憶に新しい。
現行規則から改正案への変化において、当サイトが最も注目しているのは、「10時間試射試験」における「出玉率の上限」が「200%→133.3%」、つまり「3分の2」の変化率であるのに対し、「儲け金額の上限の変化」の方は「24万円→8万円」となり、「3分の1」へと激減していること。
これは、出玉率だけを弄って「アウトのスピード」(1分間100個のパチンコ玉発射スピードのこと)を変更していないことが原因なのだが、それにしても余りに極端かつ危険な規制であると思う。
「儲け金額の上限の抑制」は「射幸性の抑制」、つまり「出玉の波が緩やかになる」ことに繋がる訳だが、今回のような極端な規制は、来年2月以降、新規則の下で新しい遊技機が市場に浸透していくにつれ、大幅な業界売上高の減少とユーザー離れを引き起こす可能性がある。
まとめ
正直、今回の規制案の内容を最初に確認した時、非常に驚いた。
これまで警察庁は、一連のパチンコ業界に対する様々な厳しい規制をしてきた訳だが、結局のところ、業界全体へ多大に影響を及ぼしてしまうような決定的な処置までは、まだ行っていない。
しかし今回は違う。
規則改正において「遊技機の射幸性基準を変更する」ということは、「業界全体をパラダイムシフトさせる」ことと同義語だ。
この負の方向へのパラダイムシフトは、前章の最後で述べた様に、大幅な業界売上高の減少とユーザー離れを誘発する可能性がある。
ところで、警察庁によって「パチンコの試射試験における出玉率の変更」が行われた経緯を、もう一度ここで確認してしておこう。
それらは、以下のようになる。
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「ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議」が取りまとめた「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」において、「ギャンブル依存症対策」として「出玉規制基準の見直し」を行うことが盛り込まれた。
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1 を踏まえ、遊技者による過度な遊技を抑止するため、「儲け金額を4時間で5万円以下にする」ことが目標に据えられた。
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2 の目標を達成するため、「4時間試射試験」の新たな導入と「出玉率」が定められ、これを基準に既存の「1時間試射試験」と「10時間試射試験」の「出玉率」も変更された。
以上が経緯であるが、ここで問題になってくるのは、「『儲け金額を4時間で5万円以下にする』ことが、本当に『ギャンブル依存症対策』になるのか?」という点であろう。
この点について警察庁は、リカバリーサポート・ネットワークのデータを参考にしたとされるが、リカバリーサポート・ネットワークの西村代表理事は、「RSNが報告書等で発表した相談データは、遊技性能の規制根拠となるようなものではなく、5万円や4時間等の具体的な数値設定が依存のリスク軽減につながるとした報告は行っていない」と明言している。
さらに、業界団体の全日遊連も、依存症リスクと射幸性に関して、確たる数値的根拠が示されている訳ではないという立場を取っているのだ。
どうやら警察庁は、学術的データ等の根拠なくして、独断により今回の「出玉規制の数値」を設定してしまったようである。
今パチンコ業界は、かつてないほどの重大な局面に立たされているのではないだろうか?
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